Loading...

Aug 10, 2019

萬歳公重の「東京で出会う 心ときめく静岡茶」 vol.2 「Satén Japanese tea」 の“日本茶スタンド的抽出スタイル”

私が東京で体験した“ワクワクする静岡茶、日本茶の愉しさ”をレポートさせていただく本企画。第2回は東京・西荻窪「Satén Japanese tea (サテン ジャパニーズ ティー)」のユニークな煎茶の淹れ方をご紹介したいと思います。



日本の文化と暮らしに根ざす、毎日立ち寄れる日本茶スタンドを志向

同店は、日本茶専門店などで修業後に日本茶とコーヒーのお店を運営していた小山和裕さんと、海外の有名コーヒー店の日本1号店のトレーナーなども務めたバリスタの藤岡 響さんが、㈱抽出舎を設立して2018年4月にオープンした日本茶スタンド。

日本茶を軸に幅広いメニューを提供しており、リーズナブルでイートインとテイクアウトの両方に対応。1杯ずつ目の前でていねいに淹れるライヴ感や安心感、ほどよい距離感の接客、DIYも多く行ったという和と北欧がミックスされたインテリアと、多くの魅力や心地よさが詰まった大注目のお店です。

萬歳公重の「東京で出会う 心ときめく静岡茶」 vol.2 「Satén Japanese tea」 の“日本茶スタンド的抽出スタイル” photo (小山和裕さん(左)と藤岡 響さん(右)。「抹茶ラテ」のテイクアウトを準備中 )



同店のコンセプトは「Leaf to Relief(茶葉から一服へ)」。

1杯の日本茶の背景にある産地や農家などのストーリーまで伝えたいと考え、実際に農家を訪ねたうえで仕入れる単一品種・単一農園の“シングルオリジン”の日本茶を取り扱っています。

静岡茶は現在2種類を仕入れており、今回は月替りで2銘柄を供する「Today's Green Tea(本日の日本茶)」として、静岡市清水区両河内「豊好園」の「香駿」のHOTをいただくことに(450円。なお、茶葉は50g・1500円)。豊好園は現在、若き3代目が先頭に立ち、20種類以上の品種茶を手がけている茶農家さんだそうです。

小山さんが淹れてくださるのを見ていると、あれっ?! 思っていたのと違う! 1煎目が2煎目以降用のお湯が入ったポットとともに供されるのかなと勝手に想像していたのですが、その淹れ方は予想を覆す次のようなものでした。



氷水と熱湯を使い、急須と茶海を行き来させて抽出

萬歳公重の「東京で出会う 心ときめく静岡茶」 vol.2 「Satén Japanese tea」 の“日本茶スタンド的抽出スタイル” photo

(まず、急須に茶葉を5g入れ、氷水を30㏄そそいで2分待ちます)



萬歳公重の「東京で出会う 心ときめく静岡茶」 vol.2 「Satén Japanese tea」 の“日本茶スタンド的抽出スタイル” photo

(2分経ったら、茶海に96℃の熱湯を200㏄入れ、急須のお茶を茶海にそそぎます)



萬歳公重の「東京で出会う 心ときめく静岡茶」 vol.2 「Satén Japanese tea」 の“日本茶スタンド的抽出スタイル” photo

(茶海にそそぎ終えたら、今度は茶海から急須にお茶を戻します。この要領で適切な濃度になるまで、お茶を急須と茶海の間で5回ほど行き来させます)



萬歳公重の「東京で出会う 心ときめく静岡茶」 vol.2 「Satén Japanese tea」 の“日本茶スタンド的抽出スタイル” photo

(ちょうどよい濃さになったらカップにつぎ、残ったお茶が入った茶海とともにサーブ。「あんバタートースト」とも好相性!)



飲んでみると、さわやかなコクや甘み、すっきりした渋みが一体となった味わいで、香駿がもつフローラルな香りと、少し中国茶を思わせるような余韻も感じられ、心がほどけるおいしさ! 

ちなみに、カップも特徴的。気軽に飲んでもらえるように、また、昔ながらの喫茶店を彷彿させるレトロ感のあるものを選んだという日本製のコーヒーカップは、日本茶の香りが感じられやすいよう、口にふれる部分が少し薄手のものがセレクトされています。

また、フードやスイーツは日本茶にもコーヒーにも合うものをそろえていて、今回は羽のような削りバターも印象的な、“あんころもち”をイメージしたという「あんバタートースト」(450円)と一緒にいただきました♪



1~3煎分の味わいを一度に集約した抽出法

なぜ上記のように抽出するのかをうかがいました。

煎茶は煎を重ねる淹れ方が一般的ですが、それは時間も人手も要し、テイクアウトも行う気軽な日本茶スタンドという形態に合いません。そこで「1~3煎分の味わいをいかに一度に抽出するかを考えました」と小山さん。

まず少量の氷水で茶葉の凝縮された旨みや甘みを引き出し、それを“みそ汁にダシを入れるイメージ”で茶海の熱湯にそそぎ、そのお茶を茶海と急須の間で行き来させることでさわやかな渋みなども引き出す、という仕組み。熱湯によって渋みや苦みが出過ぎないかたずねると、急須と茶海の間を行き来させるうちに湯温が下がるので、過度な渋みは出ないのだとか。また、「茶葉の成分は、純粋なお湯の状態のほうが抽出されやすく、お茶の濃度が高くなるにしたがって溶け出しにくくなるので、後半は渋みはそれほど出ないんですよ」と藤岡さん。

ちなみにこの淹れ方は“シングルオリジン”の茶葉の時に用いる方法だそう。品種などに応じて急須と茶海を行き来させる回数などを調整することで、各茶葉の持ち味や特徴を引き出すのだそうです。

伝統をふまえたうえでの独創的な淹れ方は、“淹れ手”のプロとしてのこだわりと探求心の賜物でした!



日本茶のアレンジドリンクにも注目!

萬歳公重の「東京で出会う 心ときめく静岡茶」 vol.2 「Satén Japanese tea」 の“日本茶スタンド的抽出スタイル” photo

(夏にとくにおすすめの「煎茶ジントニック」。好みの席でくつろぎのひとときを )



もう1品、静岡茶を使ったドリンクをご紹介します。

静岡・掛川「ひらの園」の合組の深蒸し茶は“これぞお茶!”と感じられるバランスのよい味わいで、「本日の日本茶」でも登場する銘柄ですが(HOTは420円。なお、茶葉は50g・1200円)、「煎茶ジントニック」(900円)でも使われています。茶葉を1週間漬け込んで緑色に染まったジンにトニックウォーターを合わせてあり、とてもさわやか! ゴクゴク飲めてしまうので飲みすぎにはご注意を(笑)。

さて、カウンターがフラットなのにお気づきでしょうか? 

同店のカウンターは奥行があり、作業スペースとお客のスペースの間にあえて段差を設けていません。これも、ゆったり過ごせる理由の1つ。お茶を淹れる様子が眺めやすいのもうれしい! 私のお気に入りは写真奥の茶香炉のそば、カウンター席の端っこです。


萬歳公重の「東京で出会う 心ときめく静岡茶」 vol.2 「Satén Japanese tea」 の“日本茶スタンド的抽出スタイル” photo



---------------------------------------

Satén Japanese tea

東京都杉並区松庵3-25-9

tel 03-6754-8866

営業時間 10時~21時、金曜 ~23時

月曜休(祝日の場合は翌火曜休)

https://saten.jp

---------------------------------------