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Oct 1, 2018

林夏子の「はてしないお茶物語」vol.1 静岡秘境お茶カフェに、おっちゃんに会いに行く♡

こんにちは、お茶ライター林夏子のコラム「はてしないお茶物語」。第一回目は、お茶静岡市の山間地、オクシズと呼ばれ地域、奥藁科(おくわらしな)地区「大川大間(おおかわおおま)」へ伺います。標高700メートルの秘境でお茶づくりの匠の営むお茶カフェがあるという情報を入手。公共交通機関ではいけないので、静岡駅前でレンタカーを借りて出発です!



オクシズってどんなとこ?

静岡駅から安倍川を渡り、藁科川沿いを上流に向かって車を走らせます。安倍川を渡り藁科街道へ入るころには市街地は切れて、車窓から田んぼや茶畑が楽しめます。静岡茶の始祖といわれる「聖一国師」の生誕の地の石碑や南アルプスに連なる七つ峰から流れる美しい福養の滝、良質の天然温泉、湯ノ島温泉など観光スポットも点在します。



林夏子の「はてしないお茶物語」vol.1 静岡秘境お茶カフェに、おっちゃんに会いに行く♡ photo

(山々に抱かれるように集落が広がり、茶畑が作られている大川地区)



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(すでにお客さんがいらっしゃいました)



大間縁側お茶カフェは毎月第一、第三日曜日に農家さんがご自宅の縁側を開放してお茶とお茶請けを出してくださいます。


10時過ぎに静岡駅を出発し、すれ違うのも困難な細い山道をドライブすること1時間ほど。藁科川の最上流にある大川地区に到着しました。民家の庭先に立てられた「営業中」の旗が目印です!すでに2組のお客さんが縁側に腰を下ろしていらっしゃいました。



この人がお会いしたかったおっちゃん!

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(「大川大間」の生産者・中村敏明さん)



昨年12月20日に放送された明石家さんまさんがMCを務める「ホンマでっか!TV」で、さんまさんがその1年で買ってよかった10個のアイテムのうちの一つとして紹介されたのが「大川大間」というお茶。その「大川大間」をここ大川地区で生産されているのが、中村敏明さん。


とってもお話が上手で気さくな方でした!周りの方からも親しみを込めて「おっちゃん」と呼ばれていたので、以下「おっちゃん」と呼ばせていただきます。



まずはさっそくいただきます!

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(さっそくおっちゃんから呈茶いただきました)



一煎目は46~48℃のぬるま湯をタイマーで55秒計って抽出。一口いただいて、びっくり。舌の上にパンチの効いたうま味がのり、じわりとあとから鼻に抜けるような香りとあま味。美味しい!二煎目は80℃でサッと出し、三煎目は熱湯でサッと淹れたお茶を氷に垂らしていただく急冷茶でいただきます。うま味、渋み、甘みのバランスが変わって同じ茶葉なのに全く違う味わいが広がります。


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お茶の抽出を待つ合間におっちゃんのお母様が畑で採れた野菜を使って作ってくださったお茶請けをいただきます。(お茶・お茶請け付きで1席300円)


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おっちゃんの縁側では温茶と冷茶二種類の淹れ方を楽しめます。

氷に冷水を少々注いで淹れた「ロック大川大間」の味と言ったらもう……!お茶の概念が変わると思います!ぜひ一度味わっていただきたい逸品です。(温茶と冷茶をいただく場合は2席分の料金が必要です)



さんまさんに大川大間を紹介いただくまでのおっちゃんの物語

「夏も近づく八十八夜」と歌われるように通常、四月下旬から5月上旬の八十八夜の頃が新茶の摘採時期。早ければ早いほど茶市場では高値がつくため、新茶を一日でも早く出すことがお茶農家にとって大切です。ところが、ここ大川大間は標高が高く新茶時期が5月半ばから6月にかけてと大変遅いのです。「出荷の時期」だけで勝負すれば、早く出された茶葉と比べ、安い価格でしか売れません。

 

悔しさの中で、どうしたら誰にも作れない美味しいお茶が作れるかを考え続けたといいます。そして、おっちゃんは、畑で摘採した生葉の新鮮さをそのままお茶にしようと決めたのです。畑で摘んだ時に100だった鮮度を摘採から蒸しまでの加工時間をできる限り短くすることで茶葉にした時も鮮度100に近づくように工夫したのです。お茶の味の一つである「苦み」はタンニンの成分が抽出したものですが、葉が痛んだために出る味でもあるとおっちゃんはいいます。その努力の甲斐があり、葉が痛んで出るお茶の苦みを極力抑えた、濃く出しても苦みのでないお茶を作ることに成功したのです。


そして、自分で納得する美味しいお茶をもって問屋さんへ出向きました。しかし、何度掛け合っても、問屋さんの提示する値段とおっちゃんが思っている値段とはキロ単価で1000円も違いました。おっちゃんは悔しくてもその値段に甘んじるしかありませんでした。そんななかで、合組(ブレンド)が主流だったお茶業界で地域問屋の葉桐清巳社長が単一品種をストレートティで販売する「シングルオリジン」を始め、おっちゃんのお茶が「大川大間」として誕生したのです。


おっちゃんと当時若社長だった葉桐社長とはとても波長が合ったといいます。

持って行ったお茶を飲んだ葉桐社長から

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「これ、おかきつまみながら揉んだだろう」と聞かれたそう。図星でした。


あるときは、

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おっちゃん「社長、ちょっと違うだろう。なんだと思う?」

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葉桐社長「ダニか?」とズバリ言い当ててしまいます。


毎回、繊細な舌を持つ葉桐社長との真剣勝負。もちろん、少しでも味が悪ければ価格に影響する厳しい世界です。


そうやっておっちゃんと葉桐社長は25年間、二人三脚で大川大間の味を研鑽してきました。そして、昨年末。明石家さんまさんによってテレビで大々的に紹介されたことで「大川大間」は押しも押されぬブランド茶として確立しました。おっちゃんは多くは語らなかったけれどそこに至るまでに悔しさに歯を食いしばった日もたくさんあったに違いないのだと思うと、胸に込み上げるものがありました。これからも、おっちゃんの大川大間は進化を続けるようです。また、そんなおっちゃんに会いに縁側カフェにお邪魔します!



▼大川大間

http://www.hagiricha.com/japanesetea-honyama/ookawa/


▼大間縁側お茶カフェ

http://www.okushizuoka.jp/100sen/spot/001385.html