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Mar 28, 2019

林夏子の「はてしないお茶物語」 vol.5「これがぼくらの静岡茶、現在進行形」座談会レポート 前編


1月17日、d-labo静岡にて「これがぼくらの静岡茶、現在進行形」座談会を開催しました!プロダクトや生産方法、会社の組織、それにとどまらず生き方そのものがクリエイティブな生産者さんと茶商さんにお集まりいただきました。皆さんにご自分の作ったお茶をご持参いただき、そのお茶を皆さんと試飲させていただきながら、茶業のクリエイティビティをテーマにお話しいただきました。ファシリテーターは日本茶インストラクターの高津真さん。



お茶の力と一緒に関わったの魅力が引き出される(杉山さん)

トップバッターは藤枝で無農薬無化学肥料でお茶の栽培・加工・販売をされている「葉っピイ向島園株式会社」の向島和詞さん、薗田雅之さん、杉山 雄哉さん。

林夏子の「はてしないお茶物語」 vol.5「これがぼくらの静岡茶、現在進行形」座談会レポート 前編 photo



さっそくご持参いただいたお茶をいただきます!

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はやし「はちみつのように甘い香りが素晴らしいです」


向島さん「うちの茶工場の敷地から縄文土器が出てきて、その縄文土器は博物館に展示されたのですが、昔、縄文人はここで星の位置を見ながら、種の植え付けを決めていたということです。これはそこで育った在来品種です。差し木ではなく、種から育てたお茶は生命力が非常に強いのです。『縄文のお茶』と名付けました」



お茶も人間と同じ生命のある生き物として大切にする、という先代の考え方に強く共感され、先代の急逝により18歳という若さで家業を継がれた向島さん。



向島さん 「自分がやっていることが、本当に持続可能なのかどうかを考えています」



「農業」や「経営」という枠にとどまらず、「環境」や「未来」を見据えた強い理念のある向島園さんのお茶作り。



杉山さん 「園主とは高校からの付き合いですが、まだ10代の園主の作ったお茶を飲んだインパクトが忘れられません。僕の祖父はお茶を作っていてお茶は飲みなれていましたし、当時園主は技術的にまだ未熟だったはず。それなのに、毛穴から何かが出るほど美味しかった。お茶の力と一緒に作った人の魅力も引き出されるのだと思います 」


薗田さん 「僕らは皆さんに『ラブレター』を渡すつもりでお茶を作っています。思いを伝えるのは簡単ではないけれど、どうしたら伝えられるかを真剣に考えています 」



肥料や農薬に頼らない分、真夏でも早朝から茶園の草を刈るなど、まさに子どもを育てるように手をかけて出来上がったお茶。安心安全でおいしいお茶であることに加えて、お茶作りの理念や作っている人の魅力が向島園のファンを増やし続けていることは間違いありません。



縄文のお茶 80g1500円(税抜)

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向島園の茶工場の敷地内から縄文式土器が出土。そこに植えられた種から育てた在来品種。昔ながらの浅蒸製法で作りました。

●葉っピィ向島園 http://www.mukoujimaen.jp/



もっとお茶を愛してやればいいと思うんです(次郎さん)

両河内(静岡市清水区)の雲海越しに富士山を望む茶園・豊好園の片平次郎さん。

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ジローさん 「これはうちの品評会用かぶせ茶です。うん、美味しい♪ 」


はやし 「今日東京・日本茶専門店いずみや舗の横田さんも駆けつけてくださいました。実は次郎さんのお茶を卸してらっしゃる横田さん。数ある生産者さんの中から次郎さんとの取引を始められたキッカケがあるのでしょうか? 」


横田さん 「お茶が美味しいのはもちろんなのですが、試飲の際に添える言葉が『自分のお茶めっちゃうまいから飲んでみて!』だったことです」



横田さんはそんな次郎さんの言葉に次郎さんのお人柄やお茶への探求を感じたのだそう。

会場で観覧中の女性から「旨味が濃厚で美味しい!」という感想もいただきました!

次郎さんの現在進行形のお茶作りとは。



ジローさん 「放棄茶園をたくさん借りて改植を行っています。現在(※2019年1月)は秋に粉砕機で地表部を粉砕して荒野のようになった茶園の茶木を油圧ショベルカーで抜いています。その後にくる身体の疲労は半端ないです。それでも、春には15,000本の苗を植え、5年後には新しい茶園になる。想像しただけですごくわくわくするし、楽しくて仕方がない。お客さんにお茶を美味しいなと思っていただけたらありがたいというのは大前提ですが、ペットボトル用の秋冬番茶を作るのも手もみの高級茶を作るのも油圧ショベルカーで茶木を抜くのも、楽しいです」

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向島さん 「もう正気とは思えないレベルだよね 」


ジローさん 「ばか楽しいっすからね(笑)それでもお茶作りほど、クリエイティブな仕事ないですよ。栽培した作物をそのまま市場に出してるんじゃない、製茶工程が入ってる時点でお茶はすごくクリエイティブだなと思う。僕はお茶を愛しているし、お茶を信じているから。もしも茶業をやっていて楽しくないという人がいるなら、もっとお茶を愛してやればいいと思うんです 」


品評会出品茶 10g 1000円(税抜)

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豊好園が技術を注ぎ込んだ品評会用かぶせ茶。

湯を注ぐと「一芯二葉」の生茶葉がそのまま再現される茶づくりの原点。

●豊好園 http://houkouen.org/ 



お茶は希望です。希望でしかない(北條さん)

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同じく両河内(静岡市清水区)でお父様たちの創業した製茶工場を引き継がれたグリーンエイトの北條広樹さん。お茶の栽培・製造・販売だけでなく、日本茶カフェも展開されています。


北條さん 「今日飲んで頂くお茶は清水でまちこと呼ばれている静7132という品種を使った、紅茶です。紅茶は原料の茶葉の品種によってスイート・マイルド・ビターの3種類を用意しています。お客さんに選ぶ楽しさを感じてもらえたら 」


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お茶のパッケージとしてはかなり珍しいブラックに赤・黒・白のラベルというクールなパッケージ。これはジャケット買いをしてしまいそうです(←実際にしました)。


お母様が体調を崩されたことをきっかけに脱サラしたのが9年前。当初は茶価が下がり想像以上に厳しいと感じられたそうですが、積極的に催事に出てお客様に出会い、リピートしてくださるお客様とのご縁を大切にしてこられました。お茶とは「希望」だとおっしゃると北條さん。



北條さん 「3年前に工場併設のカフェを作り、そこでさまざまなお茶やお茶スイーツを楽しんでいただけるようになりました。また、カフェを拠点にしてグリーンツーリズムも行っています。操業中のお茶工場で生産や製造の工程を見学してもらったり。新茶の時期にはお茶を積んだトラックが出入りしたりするのですが、操業中のお茶工場から漂う旬の香りやその時期特有の両河内の躍動感を感じてもらえる『生産現場に一番近いカフェ』だと自負しています。将来的にはすべての製造工程がガラス張りで見学できるオープンファクトリーを両河内に建設したいと思っています 」


上野先生 「面白い。オープンファクトリーは今後非常に重要になると思います 」



グリーンエイト 紅茶マイルド ティーバッグ 3g×12個 600円(税抜)

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清水で「まちこ」という名で呼ばれる桜の香りのする静7132という品種を使用した紅茶。優雅な香りと深いコクが特徴の和紅茶です。ミルクティーとして楽しむのもおすすめです!

●グリーンエイト http://www.green8.bz/




\登壇者のご紹介/

高津 真さん(消費/日本茶インストラクター) 

日本茶インストラクター。「現在進行形の日本茶」の世界を描く、日本茶ファン発のお茶ドキュメンタリー映画を製作中(2019夏公開予定)。


横田 智さん

日本茶専門店いずみや茶舗 &カフェ経営。実家が華道・琴教室を営み、幼少期からお客様にお茶を出すことが身近にあった。趣味で生産者さんに会いに行っているなかでお茶屋が始まる。Satén japanese tea(東京・西荻窪)の日本茶担当。静岡茶のお取り扱いも多数。

●日本茶専門店いずみや茶舗:http://izumiyachaho.ocnk.net/


上野 雄史さん

静岡県立大学経営情報学部准教授。専門は財務会計。向島園の独立採算の会計制度などを組織会計の視点から注目。


小澤 俊幸さん

長年静岡県の農業の現場指導や行政に携わり、静岡県茶業会議所専務理事3年目。力強いコアな茶業者が出てくれば静岡の茶業界全体として引っ張り上げてくれるという作用があり、そこに期待したい。また、トップランナーと全体をどう結び付けていくのか、茶業界に刺激を与え、変わることの必要性を業界全体が共有できるようにすることが我々の役割だと思っている。

●静岡県茶業会議所:http://shizuoka-cha.com/