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Jun 3, 2019

林夏子の「はてしないお茶物語」 Vol.7 富士山に浮かぶ雲海が望める絶景の茶園


林夏子の「はてしないお茶物語」 Vol.7 富士山に浮かぶ雲海が望める絶景の茶園 photo


静岡県静岡市清水区の庵原(いはら)と呼ばれる地区に吉原といわれる地域があります。茶園から清水港と富士山が望め、気候条件がそろえば雲海に浮かぶ富士山が観られるという絶景の茶園です。数年前にはTOYOTAのアクアのCMで撮影された、写真家の間ではとても人気のある場所。その吉原で明治時代から100年以上茶業を行っていらっしゃる「マルジョウむらかみ園」の園主・村上博紀さんを訪ねました。




100年前の清水港の活況

林夏子の「はてしないお茶物語」 Vol.7 富士山に浮かぶ雲海が望める絶景の茶園 photo

(「大海」と呼ばれる大きな茶袋が荷積みされる様子。文字通り清水港から大海原を渡っていった)



今から100年以上前の1906(明治39)年、マルジョウむらかみ園さんのある吉原からほど近い清水港でお茶の直輸出が開始されました。清水港はその4年後には横浜港を抜いて全国のお茶輸出量の80%を占めるまでに拡大したそうです。

茶町周辺の製茶問屋街から清水港へのお茶の輸送量が増え、荷車では追いつかなくなり、軽便鉄道(現在の静岡鉄道)が整備されたりと、静岡の街はお茶とともに繁栄してきました。




マルジョウむらかみ園のお宝発見?!

マルジョウむらかみ園さんの茶業の創業もちょうどその頃。明治時代に村上善三さんが製材業の傍らで茶業を始められたそうです。


林夏子の「はてしないお茶物語」 Vol.7 富士山に浮かぶ雲海が望める絶景の茶園 photo

むらかみさん「実は林さんに聞かれて、うちの歴史を調べていたら、いろいろなものが出てきました!曾祖父の手紙とか日記がたくさん出てきたんです」


林夏子の「はてしないお茶物語」 Vol.7 富士山に浮かぶ雲海が望める絶景の茶園 photo

はやし 「おじいちゃんの青春の記録だったら、読んでいいのでしょうか」


林夏子の「はてしないお茶物語」 Vol.7 富士山に浮かぶ雲海が望める絶景の茶園 photo

村上さん 「いや、そうじゃなくて、お茶の取引の内容とかを書いたものです」


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林夏子の「はてしないお茶物語」 Vol.7 富士山に浮かぶ雲海が望める絶景の茶園 photo


手書きの契約書や帳簿、製材業の時使用した法被に至るまで倉庫や鍵付きのタンスに大切に保管されていたそうです。当時の取引がいかに活発だったかがうかがえます。


村上家の茶業の功労者として際立っているのが2代目園主の森太郎さんです。波乱万丈なお茶人生を送られたようです。


森太郎さんが家業を継いで間もない26歳の時、1923年(大正12年)9月1日に関東大震災が起こり、その復興のために材木に多くの需要があり大量の木材を横浜へ出荷したものの詐欺に遭ったそうです。今でいう「億単位」の負債を抱えたとか。巨額の借金の返済のため、一時は所有資産を全て処分することも考えたそうですが、森太郎さんは踏ん張ります。製材業を辞め、製茶業に一本に絞り、借金は数年で完済したといいます。


昭和に入って戦争が始まり、嗜好品であるお茶の生産は後回しにされ、空襲が頻繁になったことで茶業ができない時代もありました。そんな中でも森太郎さんはみかんの倉庫となった茶工場の片隅で、茶の手揉みを続けていたそうです。平和な時代が訪れ、再び茶業を行えるようになってから森太郎さんは地元のコンテストで毎年入賞し、手揉みの名人として知られていたそう。今も村上家には森太郎さんの受賞した昭和24年全国製茶品評会・煎茶部門で3位の賞状が大切に保管されていました。


森太郎さんは繁忙期になると工場で寝るほどのお茶好きだったといいます。その森太郎さんのお茶づくりにかける思いと情熱は、直接、森太郎さんから茶づくりの指導を受けた公男さんと、公男さんから指導を受けた博紀さんによって脈々と伝えられています。



樹齢100年のお茶の木

林夏子の「はてしないお茶物語」 Vol.7 富士山に浮かぶ雲海が望める絶景の茶園 photo


むらかみ園の歴史を物語る樹齢100年のお茶の木があるそうなので、見せていただきました!これは「在来種」といって、日本人が長い間味わってきたお茶の品種です。近年では生産性の高いヤブキタなどの「改良種」がほとんどの茶園を占めており、現在在来種の茶園はわずかに3パーセント程度と希少な品種なのだそうです。


林夏子の「はてしないお茶物語」 Vol.7 富士山に浮かぶ雲海が望める絶景の茶園 photo


挿し木ではなく種から育てるため、地中深くに根を張り、生命力が非常に強く樹齢が長いのだといいます。その昔には森太郎さんが摘んだ茶の芽を、長い時を経て、今博紀さんが摘んでいます。摘まれても摘まれてもまた再生する、その生命力にただ圧倒されます。



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【マルジョウむらかみ園】

林夏子の「はてしないお茶物語」 Vol.7 富士山に浮かぶ雲海が望める絶景の茶園 photo

住所:静岡県静岡市清水区吉原1050

TEL・FAX:(054)368-1119

営業日:平日10時〜17時半

休業日:土曜、日曜日、祝日

WEB:マルジョウむらかみ園

https://www.murakamien.online/

直接店頭販売も行っています。ぜひお立ち寄りください。

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